大変すぎるのに生活がままならない?原木椎茸業界の実情

みなさんが普段食べている椎茸には、大きく分けて二つの栽培方法があることを知っていますか?普段スーパーでお買い物をする時に、栽培方法まで意識する方はいないかもしれませんね。

椎茸に"原木椎茸"と"菌床椎茸"があるのをご存知でしょうか」の記事でも紹介していますが、椎茸の栽培方法には菌床栽培と原木栽培があります。

きのこは木から生えるもの、我々がイメージする椎茸の栽培は原木栽培に近いのかもしれません。一方で原木栽培には、消費者には見えない厳しい現実と農家のただならぬ努力が隠されています。

この記事では、知られざる原木栽培の椎茸の現実と、そのメリットを整理していきたいと思います。

 

原木栽培椎茸を収穫できるのは2年後?

原木栽培の椎茸は、収穫までの時間はどのくらいの期間が必要だと思いますか?

市場の大部分を占めている菌床椎茸は3〜6ヶ月で収穫できてしまいます。一方で、原木栽培(露地)の椎茸はなんと1年半から2年半かかります。

原木栽培では、"ほだ木"と呼ばれる椎茸を植え付けるための丸太を用意するところから始めます。そして椎茸の菌が入った種駒(たねごま)をほだ木に打ち込みます。

その後、椎茸が発生する最適な条件が揃うまで、"仮伏せ"・"本伏せ"と呼ばれるほだ木を寝かせる期間が発生します。ただ寝かせるわけではなく、温度・湿度・日照条件を管理し、ほだ木を重ね直す"組み換え"も行います。

この期間が非常に長く、ほだ木が収穫できる状態になるまでに1年から2年かかり、辛抱強く面倒を見る必要があります。ほだ木は一本一本がずっしりと重く、持ち運ぶだけで重労働となってしまいます。

種駒を打ち込んだほだ木

椎茸を発生させるタイミングも注意が必要です。椎茸は決まった温度・湿度でのみ発生するため、条件を揃えるのが一苦労なのです。数℃違うだけで収穫量に大きな違いが出てきてしまいます。

重労働なうえ繊細な作業が求められる、これが椎茸の原木栽培なのです。

 

原木栽培は儲からない?

育てるのに非常に手間がかかる原木栽培の椎茸。追い打ちをかけるように経営面でも課題があります。

少し古い記事ですが、「農業協同組合新聞の記事(菌床栽培の生しいたけ、所得率24.1%~平成18年度「栽培きのこ」の経営収支2008年)」に、原木栽培農家の年収が掲載されています。

原木栽培農家の粗収益(費用も含めた収入)は295万8000円。なんと菌床栽培の椎茸農家の年収に比べて3分の1です。さらに経営費(原材料費)は、254万5000円と粗収益の約86%を費やします。所得となるのは、たったの14%しかありません。収穫まで2年かかるうえ、ほだ木の管理などにも人手がかかるため、労働1時間あたりの所得は150円となる試算が出ています。

そのような背景もあり、厳しい状況にある原木栽培農家の数は年々右肩下がりになっています。

手間はかかるしお金にならないという、非常に厳しい経営を強いられているのが原木栽培農家の現実なのです。

 

原木栽培の椎茸は衰退するのか?

非常に厳しい椎茸の原木栽培ですが、メリットはないのでしょうか?ヒントとなるのは、手間ひまかけて作る椎茸農家の努力と、自然の力を借りて育つ環境の違いにあります。

原木栽培は個性的な椎茸が育つ

菌床栽培に比べ原木椎茸は、かなり長い時間を掛けて栽培をしています。それゆえに各地域の自然環境や、その中で椎茸を育ててきた農家の工夫が色濃く反映されます。

あるものは椎茸独特の香り高く、あるものは肉厚でプリプリの食感を持ち、あるものは子供の顔ほどの大きさに。育てられた環境と農家の工夫により、個性的な椎茸が育つ。これが原木栽培の椎茸の大きな魅力なのです。

均質化されたものに飽き飽きし、個性的で自分にあった"お気に入り"を見つけることに関心が寄せられる時代。椎茸の世界の個性派集団、原木栽培椎茸が日の目を見る日がやってくるのではないでしょうか。


さいごに

個性的な椎茸を生み出す原木栽培。椎茸祭でも、原木栽培の椎茸を利用した乾燥椎茸を販売しています。

 

椎茸祭の乾椎茸の特徴は、うま味成分の驚異的な含有量です。成分分析を実施した結果、なんと通常の椎茸の30倍であることが分かっています。

原木栽培農家が手間ひまかけて作った、愛情たっぷりうま味たっぷりの椎茸をぜひ味わってください。椎茸祭は、苦しい中でも良質で個性的な原木栽培椎茸を作る農家を応援していきます。